<山の登り方>
山に登るときは、きっと人生や仕事の事を考えて登るだろうな、と思っていた。
登り方には性格が出る。
最初、急ぎ足で遅れないように、先越されないようにちょっと必死に
登っていた。
けど、すぐ胸がどきどきしちゃって疲れてしまった。
まずい、これじゃ全然行けない。
仕方がないので、ちょっと休憩してから、
今度は一歩一歩確かめるように足を運んだ。
ギュッ ギュっと足の裏で土を踏む。
一歩、一歩。
足下だけを見て、たまに先の方も見たりするけど、
足踏みちがえるといけないので、ほとんど足下を見ていた。


あとは、木の間から時折見える遠くの景色とか、見晴らしの良い所に出たときの遠くの山とか、
大事に見た。
一瞬でも大事に見た。希望だから。
今ずっとずっと同じような道しか歩いてないけど、
いつか遠くの場所目指していてそこに行きたいから、
それが少しでも見れるときは絶対に見た。一瞬でも。


あとは大体、通りすがりの人に「あとどのくらいですか?」って聞いたり、
向こうには綺麗なシャクナゲが咲いているよって教えてもらったり、
なんとなく着いた時の予想をたてて、ひたすら歩いて、そしたら結構あっという間に着く。


歩きながら多分、今地道に歩いているこの森の中の景色の方が、
きっと楽しい気がするなって思っていたけど、そうだった。
頂上には頂上の楽しみがあったけど、
着いちゃったらソレで終わりで、上で特にすることなくって、
寝てた。
私、家でも寝てるけど、山の上でも寝てて、
中でも外でも人って変わらないな〜って思った。


頂上のさらにてっぺんの石が積み重なった上で
ぽーんと気軽に登って降りていた男の子が素敵だった。
赤いチェックのシャツ着て。
山、いかにもっていう格好よりも、ちょっとそこまでってラフな格好の人の方が、
気負いがなくって、若い人もおじさんもなんかそっちの方が素敵。


山の帰り、鹿にあった。森の中と、車で降りてく道の途中で。
鹿、お尻のしっぽ丸くて白い。かわいい。
森、ちょっと夕方の静かな時だったから遅れて降りてちょっと得したな。